2025/04/09
「Will・Can・Must」の相互フィードバックを可能にするLSPワークショップ
〜“独善”を超えた意味の共創へ〜 人材育成やキャリア開発の分野で広く知られている「Will・Can・Must」のフレームワーク。これは、リクルート社が提唱したものであり、個人が仕事やキャリアを考えるうえでの重要な整理軸とされています。 Will:自分がやりたいこと Can:自分ができること Must:周囲から求められていること この3つの重なり合いこそが、個人にとってもっともモチベーション高く、成果を出しやすい“キャリアの最適領域”だとされています。 しかし、このフレームには一つ大きな課題があります。 それは、Must(求められていること)が、しばしば独善的に定義されやすいということです。
■ Mustは「他者のWill」である
あるリクルートOBの方から、次のような示唆をいただきました。 “Mustとは、他者からの期待・要望であり、言い換えれば「他者のWill」である。 つまり、自己のWillと他者のWill(=Must)のズレがしばしば葛藤や軋轢を生む。” この指摘は非常に本質的です。 本来、Mustは組織や顧客、上司や同僚など“他者”によって規定される動的な期待です。ところが、多くの自己分析ワークや1on1では、その「他者」が不在のため、Mustが推測に基づいたものになりがちです。結果として、自己中心的・独善的なMustの解釈が生まれ、現実とのギャップに苦しむケースも多く見られます。 では、この「Mustの独善性」をどう乗り越えるか?
■ LEGO® SERIOUS PLAY®(LSP)が可能にする「他者のWill」の可視化
ここで注目したいのが、LEGO® SERIOUS PLAY®(以下、LSP)というメソッドです。LSPは、LEGO®ブロックを使って思考を可視化し、対話を通じて“意味を共創する”ための、構造化されたファシリテーション手法です。 LSPの最大の特徴は、異なる立場の人間同士が、相互に「自分の中の意味(=Will)」を語り合うことができる場を作り出すことです。言語化が難しい内面や価値観であっても、モデルとして形にすることで、他者に伝わり、共有可能になります。 つまり、LSPは、「Must=他者のWill」をリアルに“その本人から”引き出すための道具なのです。
■ ワークショップ設計例:「Will・Can・Mustの相互フィードバック」
以下は、マネジメント層やチーム単位で実施するLSPワークショップの構成例です。 Step1:自己のWill・Canの可視化 参加者は、自分が「やりたいこと(Will)」「できること(Can)」をブロックでモデル化し、それぞれの意味をストーリーとして語ります。ここでは自分がどうありたいかという主体的な意志が共有されます。 Step2:他者から見た「あなたのCan・Must」を表現 次に、参加者同士が互いに対して、「この人はこういう強み(Can)がある」「こういうことを期待したい(Must)」と感じていることをモデル化します。これは、360°フィードバックをモデルとストーリーで再構成するような体験です。 Step3:相互モデルのすり合わせと対話 自己モデルと他者モデルを並べ、どのようなギャップがあるのかを確認し、対話によって認識のすり合わせを行います。Mustの“誤認識”やCanの“未認識”が明らかになることも少なくありません。 Step4:新しい役割・関係性の再設計 最後に、共有されたWill・Can・Mustに基づき、チーム全体としての役割分担や期待値を再設計します。他者のWillを尊重しながら、自己のWillと接点を見出すプロセスがここで実現されます。
■ 「独善」を超える組織文化の基盤として
多くの組織が「対話の重要性」を掲げながらも、実際には一方通行の評価や、曖昧な期待値の押し付けが起こりがちです。 LSPのような仕組み化された対話の場が導入されることで、 「自分は何をやりたいか」 「他者は自分に何を期待しているか」 「そのギャップをどう埋めていくか」 といった本質的なコミュニケーションが、安全・平等な場で立体的に進行することが可能になります。
■ おわりに:マネジメント層こそ、LSP的対話のリーダーに
マネジメントに求められる役割は、もはや「目標を管理すること」ではなく、チームメンバーのWillとMustの接点を見出し、育てることに移っています。 LSPは、そのための非常に有効なツールです。 形式的な評価制度でも、抽象的な対話促進研修でもなく、リアルな意味の共有が起きる実践の場として、組織に導入する価値は大きいと感じています。 「Will・Can・Must」を、一人で抱え込む自己分析ツールから、チームでの共創フレームへと進化させる。 その一歩として、LSPを活用したワークショップ設計を検討してみてはいかがでしょうか?
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