2025/04/24
嫌いな人は、嫌いなままでいい―― 成熟したチームビルディングの新常識 ――
「チームビルディング」と聞くと、どんなイメージを持つでしょうか? 「お互いをもっと好きになる」「仲良くなる」「価値観を共有する」――。 こうした“仲良しチーム”像が語られることは少なくありません。実際、チームの雰囲気を良くする取り組みは重要です。けれど、だからといって「嫌いな人を好きになること」がチームビルディングの目的ではありません。 むしろ、こう言いたいのです。 “嫌いな人は、嫌いなままでいい。”
“仲良くなること”はゴールではない
職場には、自分とは合わない人、考え方や振る舞いが苦手な人がいるのが普通です。 それを無理に「好きになろう」とすることは、自分の正直な感情にフタをして、かえって不自然な関係性をつくってしまいます。 本当に目指すべきは、「お互いが好きであること」ではなく、「違いがあっても、信頼し合い、協働できる関係性」です。
“嫌い”を認めると、チームに余白が生まれる
「この人、ちょっと苦手かもしれない」 「どうしても言い方が引っかかる」 そんな感情を無理に抑え込むのではなく、まずは自分の感じ方をそのまま認めること。 それでも対話し、仕事を進めていく。そのプロセスにこそ、成熟したチームの姿があります。 心理的安全性とは、「みんなが仲良しであること」ではなく、「違いがあることを前提に、安心して言いたいことが言える場」であることなのです。
LEGO® SERIOUS PLAY®に見る“嫌いでもつながれる”方法
LEGO® SERIOUS PLAY®のワークショップをしていると、こんな瞬間に出会うことがあります。 意見が対立している二人が、それぞれの“モデル”を通じて語ることで、互いの立場や背景が見えてくる。すると、感情的には相容れなくても、「この人はこういう考えなんだ」と認知できる関係が生まれます。 それは、「好きになる」のとは違う。 “嫌いでも、対話できる”。この状態こそ、プロフェッショナルなチームに必要な基盤です。
多様性を活かすとは、「違いを受け入れる」ことではない
昨今よく語られる「ダイバーシティ&インクルージョン」も、「全員が理解し合う」「心が通じ合う」ことをゴールにしてしまうと、かえって本質を見失います。 多様性とは、「違うままで、共にあること」。 つまり、“好き嫌い”を超えてつながる能力こそが、組織の未来をつくるのです。
嫌いなままでいい。でも、無視はしない。
嫌いな人を、無理に好きになる必要はありません。でも、その人の存在を無視したり、関係を断絶したりするのは違います。 違いを抱えたまま、対話し続ける。 感情と役割を切り分け、目的に向かって共に動く。それが、成熟したチームの“しなやかな強さ”です。